高価なバイオリンを選ぶ際の注意点

高価な楽器選びには注意が必要です。

10万円や20万円の量産楽器ならまだしも、『楽器店の方なら間違いないと思い、楽器店ですすめられるがままに試奏してみたところ、素敵な音色だったので、300万円のバイオリンを購入しました。』というような話を聞く事があります。

それは、本当に危険です

こちらでは、楽器選びに失敗しない為の注意すべきこと、シロップ・ヴァイオリン工房の工房長タサカがお教えいたします。

楽器選びで注意すべきこと

楽器選びで失敗しないよう、最低限、下記の点には注意すべきです。

  • 試奏は複数の場所でおこなう
  • 自分だけで演奏せず聴く側にも立ってみる
  • 専門家に意見を聞く(セカンドオピニオンも大切)
  • 最低限のコンディションチェック項目の見る目を養う

購入してから『状態が悪かったから返品したい』や『騙されたから訴えたい』といったことは、バイオリンの場合は通用しないことが多いのが現実です。

バイオリンの価値というものは、買手や売主の主観、希少性や音色など、その尺度が非常に曖昧なもので、審判のしようがないものとなります。

ですので、購入前に、しっかりした判断が出来るように知恵を付けましょう。

試奏は複数の場所でおこなう

大抵の場合、店舗で試奏をお願いすると、音が直ぐに跳ね返ってくるような密閉された狭い環境で試奏することになります。

それは、気持ちい音色に感じますよね。

ただ、これでは、本来演奏するであろうホールや演奏会場などで、どのような音色を奏でてくれるかわかりません。

そんな状態で数百万円もする楽器を買えますか。

かならず、長期間借りることはできなくとも、数日借りて、広い場所を含めた複数の場所で演奏してみると良いでしょう。

自分だけで演奏せず聴く側にも立ってみる

更に、

自身で演奏した際に体から伝わる振動や近くで聞く音色と、他人に演奏してもらい客観的に聴いてみた音とでは、想像以上に違いがあるものです。

演奏は自分が聴くものではなく、周囲に聴いてもらってこそです。

ですので、聴いてもらう側に立って楽器の音色を感じるようにしましょう。

専門家に意見を聞く

セルフチェックだけでなく、製作家や修復家、プロ奏者等にも意見を仰ぐようにしましょう。

この価格帯の楽器では、製作年や製作家が曖昧なものが非常に多いです。

自身の主観や、販売員から言われるがままの言葉や表記だけで判断するのは非常に危険です。

必ず一時貸し出しなどを依頼し、他の工房などに持ち込み、セカンドオピニオンを取るべきでしょう。

また『楽器店の販売員だから大丈夫』という先入観は捨てるべきです。

店員は販売のプロです。楽器のプロではありません。

頼るべきは、楽器のプロです。

最低限のコンディションチェック項目の見る目を養う

高価な楽器を手にする奏者の責任として、最低限は下記の状態の確認を、自身で出来る知見を蓄えたうえで楽器と向き合う必要があると考えます。

  • ボディ(割れと修理痕/膠の剥がれ/修理パッチ等の良し悪し)
  • ネック(湾曲/継ぎネック/沈み/左右のブレ)
  • サイズ(ネックや本体などの長さや大きさ)
  • ペグ(異音の有無/調弦が容易にできる状態であるか)
  • ニス(ニスの状態/塗り重ね/ケアの状況)
  • 駒(反り/弦高)
  • 指板(弦による溝/沈み)

詳しい選び方や見極め方については、下記の書籍がおススメです。

参考にすべき書籍

神田侑晃氏による、価格の算出法や、銘柄についていの情報、メンテナンスの良し悪しについての見極め方など、バイオリン選びには欠かせない書籍となります。

タサカが工房長を務めるシロップ・ヴァイオリン工房の蔵書にもさせて頂いております。

改訂 ヴァイオリンの見方・選び方 基礎編

改訂・ヴァイオリンの見方・選び方 応用編

楽器選びに失敗しない為のまとめ

  • 広い場所を含めた複数の場所で試奏しましょう
  • 誰かに演奏してもらい離れて楽器の音色に耳を傾けましょう
  • 自分だけで判断せず複数の専門家に意見を仰ぎましょう
  • 自身で楽器を見極める最低限の知識を持って楽器と向き合いましょう

その先には、きっと素敵な楽器との出会いがあることと思います。

Good Luck !

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