皆さんは、ジブリ作品の「耳をすませば」の登場人物である天沢聖司が住んでいたバイオリン工房のモデルとなった工房が実際に存在することをご存知ですか。
映画「耳をすませば」とバイオリン工房
「耳をすませば」は1995年公開されたスタジオジブリのアニメ映画で、原作は柊あおい(ひいらぎあおい)の少女漫画で1989年に「リボン」に掲載され、1990年には単行本1巻も出ています。
ひょんなことから宮崎駿の目に留まりアニメ映画化されますが、興行収入18億円以上の大ヒットとなり、映画界の各賞を総なめにしたのです。
小説家を志す女子中学生「月島雫(しずく)」と、バイオリン職人を志す同級生の「天沢聖司(あまさわせいじ)」が主人公です。
友人や雫と聖司の恋愛感情を描きながら、高校受験を控えた多感な少女が自分の将来を探し、理解ある大人に勇気付けられたり教えられたりしながら結論を見付け出す物語です。
その舞台の一つとなったのが、天沢聖司のバイオリン工房となります。
しかも、その天沢聖司のバイオリン工房が実在したというのだから驚きです。
実在するバイオリン工房のモデル
映画の中で聖司は祖父が造ったバイオリン工房で一人作成に取り組んでおり、そこに雫を案内します。
古い工房の佇まいは、道具の1つ1つにまで気を配った詳しい描写がなされており、この描写は一般視聴者だけではなく、バイオリンに携わる専門家も納得する内容です。私も、バイオリン工房を営むものとして、一時停止して眺めたりした、その一人です。
一般的なノミなどの道具だけでなく、バイオリン工房ならではのキャリパーやバイオリンをかたどったモールドなどがしっかり再現されています。
この表現は、工房描写のために詳しい取材を行っているからで、そのモデルは、日本のバイオリン制作の第一人者である茶位幸信(ちゃいゆきのぶ)氏の工房である「茶位幸信バイオリン・ギター工房」だと言われています。
タイトル画像の『耳をすませば』のエンドロールのロケーションモデルに、茶位幸信バイオリン・ギター工房の表記が確認できます。
茶位幸信バイオリン・ギター工房について
茶位幸信氏は、ジョージ・ベンソン、フィルアップ・チャーチ、ゴンチチ、高中正義など海外で活躍するアーチストからの発注も多く手掛けた巨匠でしたが、残念ながら2011年に他界されました。
当時の茶位工房ではバイオリン族の楽器だけではなくアコースティックギターなども手掛けており、氏の作品は現在でもネットオークションなどを賑わしています。
その後は、ご子息がガットギターの職人として引継ぎ、現在はバイオリン製作は行っていないそうです。
茶位幸信氏の作品について
当工房にも複数の茶位氏の作品がございますが、ラベルが木版画で作られたとみられるもので、ここにも、どことなく、ジブリっぽさを感じますね。
また、ニスが独特で、製作時期によるところもございますが、柔らかなニスの調合となっており、保管環境の管理は難しい点もありますが、素敵な音色を奏でてくれるお品となります。
ジブリファンの方は是非手にしたい素敵な逸品ですね。