バイオリンのパフリング(象眼)加工の役割

バイオリンのパフリング(象目加工)とは、表板や裏板の輪部に沿って縁取られている黒い二重線のことです。

日本語では「象目加工」や「象目細工」とも呼ばれています。

パフリングは、表板と裏板の輪部に深さ2ミリ程度の細い溝を掘って、白と黒の薄い板を3枚合わせにして埋め込まれています。

このように、とても細かい複雑な構造をしているため、手間のかかる作業で、製作者の腕の見せ所でもあります。

特にコーナー部分は緩やかな曲線で左右対称にピッタリと合わせる必要があり、とても繊細な作業です。

そのため、安価な量産品ではこのパフリングの部分を単に「線」として描くだけのものもあります。

パフリングの役割は装飾と保護

現代では、バイオリンをぶつけた時などの損傷を最小限に抑える機能とされていますが、実際にはパフリングは装飾的な意味合いも大きく、昔から様々な材料を用いて施されていました。

  • 装飾的な要素
  • 楽器保護の要素

細やかで繊細な作業であることから製作者が細心の注意を払って作業をするパーツの一つとなります。

ということは、パフリングは楽器選びにも重要なポイントとなります。

流派によっても使用される材料は異なりますが、現在パフリングに使用されている木材は、白色の材料には、曲げやすい楓材が使用されることが多く、黒色の材料は黒壇という非常に頑丈な木が用いられています。

仕上がりもキリっとした印象になり、材質が硬いので外からの衝撃を守ってくれます。

装飾的な要素

パフリングはもともと、楽器の装飾として行われていました。

もともとのパフリングは、現在の「線」の形状とは違い、象牙の小片を並べたり、べっ甲の縞模様であったり、細かな細工が施されているものでした。

なぜ楽器の輪部にパフリングがされていたかというと、その位置が細工しやすく、また楽器の輪部が強調されることで、より一層美観を高める効果があったためです。

現在のバイオリンのパフリングは表板と裏板で同じものが埋め込まれ、2本の黒壇という木材が使われています。

中にはパフリングが2重に施されている四重線(ドッペルパフリング)のバイオリンも存在します。

これは、マッジーニという昔のバイオリン製作者が作っていたことから「マッジーニモデル」と呼ばれ、現在も制作されています。

楽器保護の要素

パフリングには、装飾以外にも重要な要素があります。

それは、楽器を衝撃から保護する役割です。

パフリングは楽器の輪部に沿って埋め込まれているので、楽器の縁をぶつけてしまったり、水分の吸放出で割れてしまった場合、このパフリングが施されていなければ、楽器の中央まで一気に亀裂が入ってしまう可能性が高まりますが、パフリングの溝があることにより、割れが広がるのを防いでくれます。

修理の際に、接着断面をパフリングの線で隠すことができるので、修理跡が目立たずに綺麗に修復が可能となります。

こういった計算された構造から、バイオリンは修理の効く楽器として知られています。

また、バイオリン族の楽器たちは呼吸する楽器や生きた楽器と言われる通り、木材ならではの伸縮が常に発生しています。

特に式のある日本の気候の中では非常に湿度や気温の上下が激しく、同時にバイオリンへの負荷も大きいものとなります。

そのたびに楽器は伸縮し、膠が剥がれてきたり、割れが発生したりしますが、その木材伸縮の影響を3枚の黒白黒の板の重なりの中で抑える役割があると言われています。

パフリングは楽器選びにも重要なポイント

これらの役割を知ったうえで、高い技術を要するパフリングは、楽器選びでも重要なポイントとなります。

特にパフリングのコーナー部分の整形精度は、職人の技術の良し悪しを見極めるのにうってつけの場所なのです。

2つの方向から、コーナーに向かって合流するパフリングの断面をぴったり合うように斜めにカットし、末端まで揃えます。

カットする角度によって、バイオリン自体の表所も変わり、 これを左右対称に整形し美しいバイオリンを作り上げます。

ガルネリやストラディバリのそれぞれのパフリングを見るだけでも個性の違いが見えて非常に面白いものです。

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