バイオリンはギターなど他の弦楽器に比べれば小さくて軽いことが特徴です。
フルサイズのバイオリン本体はだいたい400グラム程度と500mlのペットボトル以下なので、持ち続けてもそれほど負担にはならないでしょう。
しかし、重さもものによって微妙に違い、一般的にいえば量産された安物の楽器ほど重たいといわれています。
かといって、軽いほど良いバイオリンかといえば決してそんなことはありません。
それは、軽ければそれだけ強度が落ちてしまうからです。
強度に欠けたバイオリンは、どんなに弾きやすくて満足のいく音を出せたとしても、弦の張力に耐えられずすぐに劣化してしまうでしょう。
弦の張力は予想以上に強く、本体には深刻なダメージとなっているのです。
つまり、良いバイオリンというのは、軽さと強度が両立したものということもできます。
軽いことによるメリット
- 軽いと奏者の負担になりにくい
- 音が減衰しにくい
バイオリンは軽ければ奏者の負担となりませんが、メリットはそれだけではありません。
バイオリンは、弦と弓が擦れることで生まれた音のエネルギーが、振動によって本体に伝えられて響くという仕組みです。
振動はほんのちょっとしたことでも損失してしまうのですが、本体が軽いとそれだけ損失を防ぐことができます。
つまり、本体は軽いほどに、相対的に大きく張りのある音を響かせることができるのです。
軽さと相反する強度
前述したように、軽ければそれだけバイオリンは弦の張力に耐えることができなくなってしまいます。
しかし、良質な楽器は強度を保ちつつも驚くほど軽さが実現されています。
それは、ひとえに経験豊富な職人のなせる技といって良いでしょう。
楽器を軽くするには、製造過程であらゆる箇所を削って重さを減らします。
板を削るのはもちろんのこと、指板やテールピース、アゴ当てなど、さまざまな箇所を削って軽くしているのです。
その中でもっとも困難なのは板を削ることで、ここに職人の技術がモノを言うことになります。
価格が安く量産されたバイオリンが比較的重いのは、このような精密な工程を経ることができないからです。
職人の手によって一つひとつ丁寧に作業していたのでは、とても安い価格は実現できません。
機械でなら5ミリ削るのに数分もあれば足りますが、職人が精細な作業でギリギリのところまで削るとなると半日は要することになります。
これをもしも粗い作業で行ってしまえば、楽器はすぐに壊れる欠陥商品になってしまうでしょう。
とはいえ、ビギナーは楽器の扱いも粗いものです。
そのため、それに耐えられるように安い楽器は重たく分厚くできているということもできます。
それから、年代物の楽器は軽い場合が多く、それだけでも質が高く感じられることがありますが実はそうとは限りません。
これは年を経て木材自体が軽くなったということや、修理を重ねたことで板が薄くなったことが考えられます。