バイオリンの裏板には主に「楓」が使用されています。
裏板も自ら振動しますが、表板の松材を有用に振動させる役目があります。
そのため、程よい堅さと美観に優れている楓材が使用されています。
相対的に、一枚板で虎杢の間隔が細い方が人気があり高価となりますが、音との関係性を結論からお伝えすると、材質が変わると音色に変化が出るのは間違いありませんが、虎杢の模様や一枚板かどうかと音質の良し悪しは直接的には無関係です。
ですが、美しい虎杢が出ているものほど、高額になる傾向にあります。
裏板にある縞の模様
バイオリンの裏板にある縞の模様は、「杢(もく)」といい、虎のような縞がハッキリと出るため「虎杢(とらもく)」とも呼ばれます。
この模様の美しさは、バイオリンの外観がまるで「芸術品」といわれる理由の一つです。
裏板の「杢」は、「木目」とは異なります。
混同されがちですが、「木目」は年輪のことで、「杢」は楓の幹がぐねぐねと曲がり、成長も遅く木の繊維が複雑に交錯することで生まれる模様です。
珍しいものだと、鳥目状の模様が出る「バーズアイ」と呼ばれるものもあります。
バイオリンに使用される際には、「杢が深い」や「浅い」といったような表現が用いられます。
深い杢というのは、木の繊維の波打ちが大きく杢の模様がくっきりと浮き立ちます。
ですが、木材の強度としては劣ることが多く、杢が深いと折れてしまうこともあり、杢の深さは木材の強度に関係します。
バイオリンの裏板に杢は無いほうが良いのか?
杢が深いと上記のような欠点があるため、あえて杢の少ないものを好む方もいます。
製作にあたっては、杢が荒めに深く刻まれているのものは大きく波打つ可能性を秘めている機体という事もあり、製作時点や長期の保管においては注意が必要となります。
一方で、上記の欠点を承知の上で、杢が深いものを使用する方もいますが、その最も大きな理由は「美観」です。
バイオリンの楽器としての要素だけでなく、工芸品として楽しみ、そこに価値を見出しているからです。
裏板の杢は、自分の使用頻度や目的を考慮して選んでみてはいかがでしょうか。
1枚板と2枚板の音色の違い
バイオリンの裏板は、1枚板で作られているものと、2枚板で作られているものがあります。
1枚板はそれだけ大きな樹木が必要になるため、市場に出回ることも少なく、貴重品であることから高級な位置づけをされています。
しかし、音響学的には優劣がなく、どちらの方が良い音色を奏でられるといった音質には無関係です。
ですが、1枚板の場合、左右の収縮率が異なるため、歪みやすいという考えもあり、あえて2枚板を好む方もいます。
見た目としては2枚板の場合、当然のことながら2枚の板を貼り合わせているので、杢の模様が左右で異なります。
そのため、見た目を重視されている方は1枚板を好みますが、どちらがいいかは音色での優劣はないため、使用する人の好みによります。
裏板の虎杢や1枚板か2枚板かは音色に全く関係ない
裏板の虎杢の模様や、裏板が1枚板か2枚板かは音色の優劣に全く関係ありません。
そのため、性能や弾きやすさが同じ商品であれば、好みのデザインで選ばれてみてはいかがでしょうか。