ウィーンフィルの弦楽器は比較的安価な物が多いと聞いたことがある方は多いと思います。
価格だけで答えると事実です。
ウィーンフィルの弦楽器奏者は、ストラディヴァリやガルネリウスのような数億円、または数千万円もするような楽器を使用しているわけではありません。
ではどんな楽器を使っているのでしょう。
答えは、町の工房で手入れされた高くて数百万円ほどの弦楽器です。
ウィーンフィルの弦楽器ってどんなもの
- 全員統一の楽器を使用(一部のコンサートマスターを除く)
- オトマール・ラング工房でメンテナンスされた楽器を代々引き継いでいる
- Joachim Schade や Franz Geissenhof が製作した作品が多い
- 近年の競売実績でも数百万円ほどのお品とされています
なのに何故あれほど素晴らしい音色なのか
ストラディヴァリなどのような楽器を使っているわけではないにもかかわらず、なぜ、あれほどに人を魅了するのか。
勘違いしている人の答え
「ウィーンは乾燥している気候だからでしょう」や、「楽器を統一しているからまとまって聴こえる」とか、そういった内容のことを第一に答える方がおられます。
上記の回答の100%を否定するわけではありませんが本質的に違います。
素晴らしい弦楽器の音色を奏でる本当の答え
- 奏者としての技術力が格段に高い
- ウィーンの音楽についての理解の深さ
奏者としての技術力が格段に高い
技術力について、こんな逸話がある。
伝説の指揮者とまで呼ばれたフルトヴェングラー氏は、若かれしころ、ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団の指揮者であった。
当時の彼は、ウィーンフィルの美しい弦楽器の響きに魅了されていた。
そして彼は、その音色を得るために、バイオリンからコントラバスに至るまで、ウィーンフィルと同じ弦楽器を手に、自身の楽団の中で演奏させたところ、音色はくすみ、輪郭のない演奏となり、散々なものであったそうだ。
同じ楽器を使っていても、奏者の技量による音色の違いは、こうも大きなものかと感じる逸話です。
ウィーンの音楽についての理解の深さ
本来、オーケストラの中での指揮者の権威は偉大なものですが、ウィーンフィルの彼ら独自の音楽センスを持ち合わせない指揮者からの指示には従わないというのです。
ウィーンフィルを理解しない指揮者のタクトには従わずバラバラの演奏となるが、指揮者とウィーンフィルのメンバーの音楽観が共鳴した時の 音楽は、どのオーケストラよりも偉大なものとなるのです。
実は日本の音楽シーンでも同様の事が起こっています
発表会やコンクールでの演奏に耳を傾けてみましょう。
バイオリン自体の音色は、多少音が小さかったりしても、対象の曲を理解している奏者の演奏には、美しいものを感じることが出来るでしょう。
上記を意識して演奏を聴いていただいたのち、実際にコンクールなどにおける予選通過者の大半は、機体の良し悪しより、音楽への理解による通過がほとんどであることがわかるでしょう。