バイオリンを弾いていると、ピアノと一緒に演奏する機会も多くなってきます。
特にコンクールの際などは大抵ピアノ伴奏をしてもらうことになるでしょう。
単音楽器であるバイオリンは和音を弾くことが不可能なので、ピアノ伴奏を頼りにする場面がでてくるのです。
ピアノ伴奏は曲を奏でるための協力者になります。
しかし、オケで演奏する機会に恵まれないバイオリニストの中には、その基本を上手く飲み込めない場合も多いです。
「なんでピアノの演奏に合わせてやらなくてはいけないのか」「好きなように演奏したいからついてきてほしい」など、エゴイズムな気持ちを抱いてしまう人もいます。
これは多かれ少なかれ誰にでもある感情だと思うので別に恥じることではないです。
技術を磨いてきたからこそ、プライドをもって演奏にあたろうとする姿勢はむしろ評価に値します。
バイオリンを個人の趣味だけで弾いている場合ならば、もちろんそれでもかまわないです。
どんな演奏でも自分が楽しめる範囲内で弾いたらいいですから。
しかし、ピアノに伴奏をしてもらう場面では大抵聴衆がいることが前提だと考えられます。
そうとなれば話は別です。より聴衆を意識した演奏を心がけなくてはいけません。
ソロの技術を磨いて独壇場というわけにはいかないので、ピアノの演奏に歩み寄ることが大事になります。
自分が目立ちたい、が落とし穴
前述でも触れましたが「自分が目立ちたい」というような自己顕示欲が決して悪だとは思いません。
むしろ技術向上の糧になるかと思います。
しかし、いい演奏かどうかを判断するのは結局のところ聴衆です。
バランスの保たれた耳心地のいいメロディです。
中には「型に収まりすぎては本当の演奏とはいえない。バランスを意識しすぎるより、情熱的に弾くべきだ」と言われる方もいるでしょう。
もちろん、間違いではありません。
そういった演奏が評価されがちなことも業界の傾向としてあります。
あくまで技術が身についている場合だと考えます。
バイオリン事態、まともな音を出すのに相当の時間をついやし、音程に至ってはプロの演奏家でも一生の課題です。
ですから公の場で「自分らしい音楽を」と思うには相当の熟練された技術が必要です。
特別優れた技術がなかったり感情表現をするほどまで余裕がなくても、ピアノ伴奏と上手く息があった演奏はとても聞きやすいものです。
まずは伴奏者を意識して調和を図りましょう。
ピアノに合わせたピッチで演奏を
まず基本の基本で、音程を合わせましょう。
ピアノは平均律で、バイオリンは純正律のため調律の時点で差が生じています。
ピアノは自身での調律は不可能ですので、バイオリンがピアノに合わせる必要があります。
微調整をするほど耳が肥えていないので無理だと思われる方も、音程の誤差は、長い音を弾くときや、弾き終わりの音を合わせる場面で現れるので意識してみましょう。
全曲通して完璧に合わせることができなくても、1曲だけでも耳を傾けて集中し音程を合わせるよう努めましょう。
後々のことを考えても無駄な時間ではないと思います。
素直にピアノの人に「音程で気になるところがありますか」と聞いてみてください
聞ける相手のいることがソロとは違う魅力的な部分でもあるのです。
ピアノ合わせをしよう
発表を迎える前に、必ず3度は伴奏の方と練習をすることをおススメします。
大体ピアノ合わせは1時間と想定しても、することはたくさんあります。
リズムの調整や、各所の細かい修正などお互いの意見や要望を擦り合わせた上で練習していきます。
1回のピアノ合わせで最低でも2回は通しをし、全体の流れを把握しましょう。
気になる事はいろいろあるかもしれませんが、まず弾き切ることも大事です。
1回1回とめていては切りがなくなってきます。
通して聞けば相手の癖や曲に対するイメージも理解しやすいです。
その上で相手に配慮した表現で要望を伝えましょう。
なるべくなら衝突は避けた方がいいです。
意外とバイオリンは社会性を有するべき楽器です。
ピアノ伴奏との関係性は強固に構築したほうがいいです。
ですからコンクールに出ると決まった時点で伴奏してもらう人を決めた方が無難です。
直前に決めるのはとてもリスキーな行為です。
3回のピアノ合わせをできないのはどれだけお互いの技術が高くても、練習していないのに等しいです。
当日お粗末な演奏をせざるおえません。
1回目は顔合わせをし、お互いの雰囲気に慣れ、2回目は細かな微調整を行い、3回目に固めに入り仕上げるといったスケジュールを組んだとしても3回でカツカツです。
できれは多く合わせれば合わせるだけ完成度はあがってくるでしょう。
バイオリンのコンディションも日々整えておきましょう。
発表前日に弦をいいものに変えようとしたりすると、当日大きく演奏が狂う場合があるからです。
伴奏と共同作業で1つの演奏を
ピアノ伴奏をしてもらう場合、相手と二人で演奏を作り上げていきます。
お互いを補い合い、必要であれば一歩引くことも大事です。
感情を込めて引くことも大切ですが、「ピアノをやりこめたい」「バイオリンだけ聞いてほしい」という感情ももちろん聴衆に伝わってしまいます。
ピアノパート、バイオリンパートで、メリハリを意識することも重要ではありますが、あくまで全体のバランスを考える必要があります。
第三者を置いて演奏を聴いてもらうのもいいです。違った視点からアドバイスをもらえます。