バイオリンの鑑定書の信憑性と必要性の有無まとめ【偽物に注意】

  • 2020年1月20日
  • 2020年3月4日
  • 楽器
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バイオリンが、いつ、どこで、誰によって作られたかどうかを表す資料の一つとして鑑定書があります。

鑑定書がついていると、楽器について素人の場合は、バイオリンがとても良質なものであるような気がしてしまいます。

では、実際に鑑定書が付いているものが全て良質な品であるのかと問われると、答えは「NO」です。

悪質な場合には、偽物のバイオリンに対して、偽物の鑑定書を作って添えて販売されているものも存在します。

ここでは、鑑定書についての情報を纏めてご紹介させて頂きます。

鑑定書の種類

鑑定書には様々な様式や、作られた様々な経緯など、多くのパターンが存在しますが、大きく分けると、下記の2種に分けられます。

製作者本人が作成した鑑定書

この種のものは、納品書であったり、購入証明であったりも、鑑定書に準ずるものとして扱われる場合もございますが、基本的には直筆サインや割り印などのある本人が作成した、いわゆる商品の保証書のようなものです。

とはいえ、本人の名前が入っているからと言って、本人から直接受け取らない限り、疑ってかかるべきです。

ただ、歴史的な価値のあるであろう人物の作品と鑑定書は、ご存命の間に受け取ることは出来ない為、後述するようなトラブルが起こるのです。

製作者以外による鑑定書

この種の鑑定書には多くのパターンが存在しますが、製作者本人ならまだしも、他人が何の資格もなく、鑑定書や証明書と名の付く書面を作れてしまうのです。

  • 製作者の親族や弟子が作成した鑑定書
  • 鑑定士が鑑定した結果を表したもの
  • 弦楽器関連の著者や研究者による鑑定書
  • 販売業者による購入証明のような形態の鑑定書
  • オークションハウス名義の鑑定書
  • 弦楽器職人や工房職員による鑑定書

こういった類の私文書にあたる鑑定書にも十分な注意がい必要となりますので、注意点を下記にまとめておきます。

鑑定書をめぐるトラブルについて

鑑定書の作成には、豊富な知識と経験が必要ですが、残念ながら、鑑定をする人の鑑定能力を証明することは難しいです。

そのため「鑑定書がついているから大丈夫」であったり、「イタリア製だから大丈夫」という認識でいると、思わぬトラブルに巻き込まれてしまう危険性があります。

経験が浅いディーラーによる鑑定書

ヨーロッパのディーラーによる鑑定書は信用される傾向にありますが、ディーラーと言っても、経験豊富な人と、経験が浅い人がおり、一概に全ての鑑定書を信用することはできません。

困るのは、あまり鑑定経験や知識がないにも関わらず、専門家気取りで鑑定をしてしまうタイプの人が存在していることです。

この手のタイプのディーラーによる鑑定書のせいで、多くのトラブルが発生しているので、ディーラーの能力をきちんと判断することも重要です。

最初から偽装ありきの鑑定書

バイオリンの制作において、製作者本人だけでなく、親や子供、兄弟が関わっていることがあります。

例えばイタリアのAmatiや、ドイツのKlotz、フランスのBernardelなどは、製作者ファミリーとして大変有名です。

このように、製作者一族が存在している場合、製作者本人が死亡したあとに、家族が、本人が残したバイオリンとして、出版などを通して、遺作を発表することがあります。

この場合、本に掲載されているものであれば、鑑定書など必要なく、製作者本人のものであるということが分かります。

しかし、やっかいなのは、製作者の子供が自らの作品を、死亡した親のものだと偽った鑑定書をつけて発表してしまうということです。

親と子供の作品のレベルの差を知っている人であれば、騙されることはありませんが、鑑定書のみを信じていると、偽物をつかまされる危険性があるので注意が必要です。

曖昧な製作者名義や製作地表記について

鑑定書が本物であったとしても、製作者の表記や製作地として表記のある場所については、実は非常に曖昧な定義がなされています。

製作者名義について

パターンは色々ありますが、一例として、鑑定書には「バイオ林太郎」が作成した楽器と表示されていても、下記のようなことが考えられます。

  • バイオ林太郎が最初から最後まで全工程を一人で作った作品
  • バイオ林太郎が一部工程を担当した作品
  • バイオ林太郎が自分の名義で販売することを認めた弟子の作品
  • バイオ林太郎が監修した作品

上記のものを全て「バイオ林太郎」の作品としてとらえるかどうかは、受け手次第ですが、バイオリン界では一般的な表記として、上記のようなものを本人作と表示してしまう傾向にあります。

製作地の表記について

この点も、製作者表記と似たような考え方が適応され、製作地が「クレモナ」とされていても、その表記は、下記のような品の全てに適応される表記となりますので、これも鵜呑みにしてはいけないポイントです。

  • 最初から最後まで全工程をクレモナで作成された楽器
  • 最終仕上げのニスだけクレモナで塗り上げられた楽器
  • 一部パーツをクレモナで作った楽器
  • 組み立てだけをクレモナで行った楽器

鑑定書は本当に必要か

鑑定書や証明書については、本物が添えられているに越したことは御座いませんが、最も重要なのは、その楽器が奏でる音色で、その楽器が本当に良質な物かどうかが最も重要なポイントとなります。

ですので、鑑定書の有無ではなく、楽器と正面から向き合うことが最も大切で、その鑑定書の信憑性に惑わされてはいけません。

販売者や鑑定者が、悪気なく、偽物と気づかずに鑑定書を添えてしまうケースなどにありがちですが、本物と思って販売してくるわけですから、楽器と向き合うあなた自身の感覚や知識が本当に大切です。

盲目的に信じてはいけない

とはいっても、鑑定書がついていると、どうしても「本物」と思いがちです。

実は、製作者はほとんどタッチしていないのに、鑑定書をつけることで、いとも簡単に「本物」と思わせてしまうことが可能です。

鑑定書を盲目的に信じるのではなく、まずはその楽器を隅々まで確かめて、購入するに値するものであるかどうかを見極めるようにしてください。

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