書籍紹介「新技法シリーズ ヴァイオリンをつくる」書評レビュー

日本語のヴァイオリン製作指南の書籍の中では、私はこちらの書籍がもっとも気に入っているものの一つです。

なんといっても、学校にて毎工程ごとに説明プリントが配布されるような細やかな説明の授業を受けているような感覚になるほどの、出来具合の書籍です。

こちらでは、そんな「新技法シリーズ ヴァイオリンをつくる( Amazon / 楽天市場 )」の特徴について紹介させていただきたいと思います。

本書の特徴

この書籍の良いところは、なんといっても、毎工程ごとの図解付きレジュメ形式のページ構成と言えるでしょう。

ご自身の手書き用に出力して、バインダーで集めたくなるような、ディアゴスティーニが一気に届くような、さすがと言える一品です。

  1. 教鞭をとる川上氏の説明がわかりやすい
  2. 豊富なイラスト具体的な計測数値が豊富
  3. 本体製作からニス塗りの過程に至るまで注意点が豊富
  4. 製図された実寸テンプレート付き

本書の説明がわかりやすい理由

こうした書籍は『説明するもの』と『教えるもの』とに大きく二分されます。

当書籍の著者である川上 昭一郎氏は、自ら製作教室を主宰され、「教える」ということに長けておられ、不明点に対する説明方法が非常に秀逸であります。

小学校に通ってわからないことをゼロから教えてもらえるイメージを想像してみてください。

とっても安心感があります。

数値入りのイラストがほぼ全ページに掲載

わかりやすいイラストだけでなく、工程ごとに、数値表記が明確に記されていることから、数値的な疑問点がうまれた時に立ち返ることができる書籍となっています。

工程ごとにまとまっているので、製作するモデルの違いによるバリエーションや、数値補足などがあれば書き足していっても良いでしょう。

製作時点での注意点の明解化

ネック入れの段階の水平計測や、ニスの塗りムラへの対応、パフリングの成形時点でのよい例だけでなくダメな例など、具体的な注意点が各工程ごとに記されています。

これらの注意点は大抵の場合すぐに処理できるものですが、ものによっては『あの時点でこの注意を受けたのは、これが理由か!』と、点と点がつながる工程もあり、楽しみながら制作に励むことができます。

書籍同封のテンプレートもそのまま利用可能

テンプレートはモールド(内型)やネックを含め、すべて綺麗にコンピュータで製図されたものとなり、非常に扱いやすものとなります。

コピーをして使用されると良いでしょう。

基本情報

新技法シリーズ ヴァイオリンをつくる
→書籍を探すAmazon / 楽天市場 )

ジャンルバイオリン製作
著者川上 昭一郎
出版社美術出版社
ページ数133ページ
サイズ26 x 18 x 1.6 cm
定価2,200円(税別)
出版日1989年2月

書籍の目次

  • 内型をつくる
  • ブロックの取り付けと整形
    • ブロック材の木取り
    • ブロック材の内型への接合
    • ブロックの整形
  • 押さえ型の整形
  • 横版と内型
    • 横板材のかんな掛け
    • 横板の木取り
    • 横板を曲げる
    • ニカワとニカワ鍋
    • 横板の取り付けと整形
    • 横板の取り付け順位
    • 内型の9ミリを取り出す
    • コーナー部の整形
  • ライニングと横板
    • ライニング材の木取りと曲げ
    • ライニングの溝ぼり
    • ライニングの横板への取り付け
    • ライニング削りのガイドを作る
    • ライニングのかんな掛け
  • 裏板の木取り
  • 裏板のはぎ合わせ
    • 木端へのかんな掛け
    • 端金ではぎ合わせ面を固定する
  • ニカワ及びニカワによる接着
    • ニカワとゼラチン
    • ニカワの強度
    • ニカワの種類
    • ニカワ液のつくり方
    • ニカワによる接着
    • その他
  • 裏板の平面出し
    • 裏板の平面出し準備
    • 裏板の平面出し(かんな掛け)
    • 定規による平面の測定
  • 裏板を切り抜く
    • 裏板にヴァイオリンのボディーの形を描く
    • 裏板を切り抜く
  • 削り台をつくる
  • 裏板の外側へ、アーチを作る
    • 裏板のアーチの荒削り
    • 中仕上げ
    • 仕上げ
  • 裏板の内側を削る
    • 裏板の厚さ
    • ダイヤル・シックネスゲージ
  • 裏板の横板への接着
  • 表板側のライニングを取り付ける
    • ライニング削り治具をつくる
  • 表板の製作
  • F孔をあける
    • F孔の位置と切削
    • F孔の加工順序
  • バスバーの取り付け
    • バスバーの位置を描く
    • バスバーの加工
    • バスバーの断面
    • バスバークランプをつくる
    • バスバーを接着する
    • バスバーの仕上げ
  • ラベルを貼る
  • 表板を横板に接着する
  • 縁を整形する
  • パフリングの象嵌
    • パフリングの位置を描く
    • コーナー部のムーヴマン
    • ストラド型とガスパロ型
    • 直線運動と楕円運動
    • ヴァイオリンの形体とパフリング
    • ストラド型ムーヴマン
    • パフリングの溝を切り込む
    • パフリングの溝をほる
    • パフリング材を曲げる
    • パフリングの象嵌(中央部)
    • パフリングの象嵌(上部と下部)
  • ボディーの縁の面取り
  • エンドピンの取り付け
    • エンドピンの穴あけ治具をつくる
    • エンドピンの穴あけ
    • リーマーでテーパーを付ける
  • ネックの製作
    • ネック材の木取り(製材)
    • ネック材の整面(ネック材の平面と直角を出す)
    • ネックの図を描く(側面)
    • ネックを切り抜く
    • 糸巻きの穴を開ける
    • ネックの図を描く(正面と背面)
    • ネックを切る
  • 糸巻箱をつくる
  • スクロールをつくる
    • スクロールの製作工程
    • スクロールの寸法
    • スクロールの仕上げ
  • 糸巻きを取り付ける
    • リーマーでテーパーを付ける
    • 糸巻を削る
  • ボディーにネックを取り付ける
    • ネックとボディーに寸法を印す
    • ボディーにネック部の溝をほる
    • ネックの仕込み角度
    • ネックとボディーの垂直を確認する
  • サドルの加工と仕込み
  • ネック及びサドルの接着
  • ネック及びボタン部の中仕上げ
  • ボディーの上部と下部の面取り
  • ニスの塗装
    • ニスを塗装する部分
    • ニスの一般的な塗装法
    • 返しバケによる塗装法
    • ラップ転写法
    • ニス塗りの修正
    • ニス塗りの仕上げ
  • 指板を取り付ける
    • 指板の寸法の確認と接着面の削り
    • ネックに指板を接着する
    • ナットを取り付ける
  • 指板の調整
  • ナットに弦のガイドを印す
  • 駒の取り付け
    • 駒の足を合わせる
  • 魂柱を立てる
    • 魂柱の寸法と位置
    • 魂柱の調整
  • 糸巻きの調整と弦
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