弦の張替えをしているとよくあるのが、駒がずれてしまう失敗です。
気が焦って急いで弦を緩めたら、コトンと倒れてしまうこともあります。
最悪の場合、駒と一緒に魂柱も倒れてしまうこともありますので、要注意です。
こうなると表版を傷つけてしまう可能性もあります。
駒のトラブル
あらかじめ駒にかかわるトラブルを知っておくことで、起こりうる前に未然に防げたり、もしくは起こっても冷静に対応できるでしょう。
駒が曲がる
駒がへの字に曲がっている場合、4弦の駒にかかる力が不均衡になるため、歪みはどんどん悪化していく可能性があります。
弦が緩んだり、逆に緊張しすぎると、駒が曲がってしまう可能性があります。
弦は人為的に緩めたり締めたりで駒の歪みに繋がることはもちろんありますが、それ以外の場合もあります。
弦は保存環境でも縮んだり伸びたりしてしまいます。
特にガット弦は湿度に弱いため注意が必要です。
駒がはずれる
曲がるだけではすまない場合もあります。駒がはずれることです。
はずれるという表現は正しくないかもしれません。
駒はそもそも表板に嵌っていたり接着されていません。
弦に抑えられ立っているだけなのです。
ですから簡単なことで倒れてしまう可能性があります。
倒れる時に表板を傷つけてしまうこともあります。
そして駒が倒れるときは、魂柱が倒れている場合もあります。
魂柱は楽器の膨らみを維持しており、F字孔から確認ができます。
駒は魂柱との張力で立っています。ですから片方が倒れると均衡が失われてしまいます。
駒の革が切れる
皮はE線と駒が接する部分に張ってあります。
薄い紙のようなもので、バイオリンを使用するごとに負担がかかり紙が切れてしまいます。
もし、元々皮が張ってない場合は付属のチューブをあてると摩擦を緩和できます。
何となく元の位置に戻すこともできますが、おススメはしません。
駒を直すなら専門家に
駒をひとまず直すことにするなら、専門家に持っていくことをおススメします。
直した経験がなければ特にです。駒はバイオリンの要で、わずか1mmの差でも音色に大きな影響を及ぼします。
繊細な楽器でもあるため歪みの修正だけでも、神経質になります。
正確に直したいのであれば弦楽器専門店などに持って行って直してもらうほうが無難です。
それは駒が曲がったり外れたり以外で、革が切れるトラブルでも同様です。
魂柱が倒れてしまった場合は自分での修正は不可能ですので、専門家に持っていきましょう。
それでも自分でするなら
そうはいっても、時間やお金の関係を考えると自分で修正を考える方もいるでしょう。
自分で曲がった駒を修正する方法もなくはないですが、リスクが非常に高いので要注意です。
ご自身で行うにしても、正確性を求められますが、下記の本の作業レベルの知識であっても、いれていれておくと役に立つかもしれません。
ずれた駒の修正方法
仕様にもよりますが、横から見て、表板に駒のテールピース側が垂直に立っているか確認しましょう。90度で立っているか前のめりになっていないかを確かめます。
厚紙等で専用のジグを作っておくとすぐ確認できます。
日々ベストな状態で演奏するためにも再々見ておきましょう。
修正前の準備
修正中に駒が倒れてしまうことがあります。
防ぐために、テールピースの下と指板の下から、タオルなどの布を挟んで駒の転倒を防ぎましょう。
あらかじめ、どれくらい修正するのか、1mm単位で見当をつけておきましょう。
位置の修正
両手で駒の端をしっかり持ちます。
一気にずらしすぎないように、気を付けなければ、はずみで一気に滑ってしまうことがあります。
大幅にズレてしまうと修正は困難になってきます。
なれない場合は、必ず片方ずつ焦らず行い、もう片方はすべるのを抑えるような感じで作業します。
曲がってしまっている場合の修正
駒が歪んでしまっている場合もテールピースに水平になるように直します。
ただし、この修正には、蒸気や熱加工法が用いられるため、一般の方が実施するにはあまりにもリスクを伴いますので、お勧めできません。
簡単に説明すると、熱や蒸気で駒を曲げやすくし、正しい形状に戻していくというものです。
時折俯瞰で水平になっているか見ながら進めていきます。
硬くて動きにくい場合
駒が固くて修正がしづらい場合、弦が溝に食い込んだり、ニスにくっついたりしている場合があります。
まずは、弦を、もう少しだけ緩めましょう。
ただし、ニスの融解により固まってしまって動かない場合は、ご自身での修復は困難とお考え下さい。
駒は音色の要
倒れる、まではいかなくとも駒が前後に傾いていると音色に影響してきます。
前に傾いていると全体的に柔らかな音色に傾いていきます。
好みもあるかもしれませんが、長期間そのまま使うと駒が変形し、正しく設置できなくなるので注意が必要です。
反対に後ろ側に傾くとクリアで大きな音色がでやすいです。
一見、そっちの方がいいと思われるかもしれませんが、Eのハイポがでにくくなります。
つまり駒が傾くと、繊細な音色が鈍ってしまう可能性があるのです。
やはり、表板の面に垂直に立った状態が、一番バイオリン本来の音色を引きだすことができます。
長年少しずつ歪んでいる場合、駒の傾きや歪みに気づかない場合も多です。
上、それから横から駒が真っ直ぐ立っているか確認する癖をつけましょう。
手元に入った最初の状態を維持するのも、バイオリンを正しく演奏するために重要なポイントであると言えるでしょう。
神経質になりすぎる必要はありませんが、自身の音楽のパートナーとして愛着をもって日々のメンテナンスをしてあげることをおススメします。