バイオリンのネックの先の渦巻きをスクロ-ルと呼びます。
スクロールの部分を見ると分かることが多く、オールドバイオリンを購入する際に渦巻き部分を見てバイオリンを選ぶという人もいます。
いったい、そこに何が見えるというのでしょうか。
ここでは、そんな謎の渦「スクロール(scroll)」について解説していきたいと思います。
バイオリン渦巻きはなんのためにある
16世紀頃まではバイオリンの渦巻きの部分は多種多様なデザインでした。
オールドバイオリンの中には、ヘッドの先端がライオンの頭や人間の顔をデザインしたものがあります。
キリスト教の影響からか天使やキューピッドを彫刻したもの、エキゾチックな龍を掘ったものまであります。
ですから、渦巻きは装飾と考えることができます。
一説には渦巻きの部分にひもをかけてバイオリンを吊るしておくためだとも言われていますが、実際には完成したバイオリンを吊るしておくようなことはほとんどないので、この説に根拠はありません。
渦巻きは古代ギリシャの影響?
バイオリンのスクロールが現在のような渦巻き模様になったのは17世紀です。
古代ギリシャ建造物の柱頭部に見られるイオニア式デザインだと言われます。
イオニア式の建造物は、ギリシャのアテネにあるエレクテイオン神殿に代表される優美で女性的なデザイン。
柱頭の装飾が特徴で、渦巻きが垂れさがったような模様をしています。
まさにバイオリンのスクロールとよく似ています。
バイオリンのデザインもエレガントで女性的。
バイオリン発祥のイタリアとギリシャはアドリア海を挟んで向かい合っていますから、バイオリンのデザインに古代ギリシャ文化が影響を与えたとしても驚くことではありません。
渦巻きはバイオリンの音と関係性
渦巻き部分が音に直接影響を与えはしませんが、間接的には影響しています。
というのも、渦巻きは言ってみれば単純な幾何学パターンです。
そして単純でシンプルな部分にこそ、製作者の技術力の差は大きく現れます。
渦巻きを見て分かること
渦巻き部分とバイオリンの音に関係はありませんが、渦巻き部分が精巧に作られているバイオリンは、腕の良い製作者によって造られたと確信できます。
つまり、熟練した職人が作ったがゆえに、良い音が出ると予想できます。
ですから、精度の高い楽器が欲しいならば、渦巻き部分を見て製作者の技術を判断できるというわけです。
ただし、例外として、ストラディヴァリと双璧をなすグァルネリの作品などはスクロール部分を手抜きしているのでは?と思うような無骨なデザインも見られます。
ですから、渦巻きがわるいからと言って一律ダメではありませんので、渦巻き部分はバイオリン選びの参考程度にとどめておくのが正解でしょう。
バイオリンの渦巻きは音色に影響を与えることはありませんが、バイオリンを選ぶうえで参考にできます。
優美で美しいバイオリンがギリシャ文化の影響を受けているというのは興味深いですね。
どうぞ大切に弾いてください。