オールドバイオリンの裏側を見ると、ボタンの部分が黒い輪になっていることがあります。
多くのバイオリンにはないことがありますが、特に高価な物やオールドな物についているものを見受けることができます。
これはなぜで何というパーツなのでしょうか。
黒いとビンテージ感が出てカッコイイと思っている人もいますがどんな役割があるのでしょうか。
ボタンの役割について
バイオリンの裏板とネックとの間、ネックの付け根部分で出っ張っているところをボタンと呼びます。
ボタンはネックを支え、弦が張ることでかかる負荷を担う、バイオリンの屋台骨のような大切な部分です。
ボタンには日常的に負荷がかかるため、修理を余儀なくされます。
特にオールドバイオリンの多くはボタンがネックごと外れたり、ボタンが割れてしまったりして修理しているものが多いです。
ボタンの黒い輪について
円形のボタンの縁を黒く囲む輪のことを黒檀リングと呼びます。
バイオリンは使用しているうちにネックが取れてしまうということがあります。
その時、ボタンが削られてしまいます。
また、ネックが経年により下がってきた場合、いったん胴体からネックを外して角度を調整して付け直します。
この際にもボタンをネックに合わせて削る必要があります。
年月が経つごとにボタンは小さくなってしまいます。
オールドバイオリンの中には、極端にボタンが小さいものがありますが、それは度重なる修理のためです。
小さくなってしまったボタンに弦の負荷がかかると割れやすくなります。
そこで、ボタンの周りに黒檀で作ったリングをかぶせて補強するのです。
これがボタンの黒い輪の正体です。
また、ストラディバリウスと並び名器と名高いグァルネリを製作したアントニーオ・グァルネリ、別名デル・ジェスは黒く塗った楽器を好み、ボタンの縁の面取り部分を最初から黒く塗ったようです。
近年では新しい楽器にも黒檀リングがあるのはなぜ
黒檀リングはオールドバイオリンに主に見られるものですが、デザイン性を重視するゆえに新しいバイオリンにもついている場合があります。
これは単なる装飾でしかありません。
なかにはごく稀ではありますが、技術不足によってネックがずれてしまい、そのずれをごまかすために黒檀リングがついているケースもあります。
新しく製作されたバイオリンに黒檀リングがついていることは、確かに見た目はオールドバイオリンのようで良いかもしれませんが、強度が弱くなるなどのデメリットがあります。
ファッションで装着している黒檀リングはバイオリンにとっては不用のものでしかありません。
職人によって丁寧に作られたバイオリンは、修理やメンテナンスをすれば何百年と使うことができます。
古いものでボタンに黒い輪があるということは、それだけ長い間使用され、修理を重ねて大切に使われてきた楽器であることの証かもしれません。