黒い点の正体は
バイオリンによって裏板の上下に黒い点のようなものが見える場合がありますが、これは木釘です。
昔に製作されたバイオリンによく見られますが、最近のバイオリンにも少ないながら見ることができます。
また、裏板だけではなく表板に木釘が使われているものもあります。
黒いものは黒檀で作った釘の場合が多く、その他に楓や松などが材料になっている場合もあります。
昔のバイオリンほど黒い点がある理由
クランプとは、バイオリンを製作する際に作業台に固定する工具のことです。
昔はこのクランプの性能があまり良くなかったので、裏板と枠を接着するのに手間取っているとニカワが固まってしまうという問題がよく生じたのだといいます。
というのも、バイオリンは裏板を枠に仮付けをして輪郭を作ってから一度剥がし、その後に接着し直すという工程があるからです。
この接着し直す際に仮付け位置とずれてしまうと、見た目が非常に悪くなってしまいます。
ズレを防ぐためには位置合わせを慎重に行う必要があるわけですが、その際に木釘がよく用いられていました。
仮付けした時に木釘の穴さえ開けておけば、それが目印となって速やかにぴたりとした位置に接着できるというわけです。
黒い点のデメリット
しかし、残念ながら木釘を使ったバイオリンにはデメリットもあるので注意が必要です。
それは、穴を開けることで板が割れやすくなることです。
木でできているバイオリンは湿度が変化するとわずかに伸縮するのですが、これが穴にとっては大きなダメージとなるのです。
木釘と木材とではどうしても伸縮率が違うので、穴にダメージが加わるというわけです。
また、修理をする際にも、木釘があると板をきれいに剥がせなくなってしまい、その結果割れてしまう恐れがあります。
慎重に作業してもどうしても穴には無理な力がかかってしまうのです。
年代物のバイオリンの木釘の穴をじっくり見てみると、そのほとんどに大なり小なりの割れを見つけてしまうことでしょう。
現在のバイオリンにもある黒い点
前述したように、古いバイオリンほど木釘を使っているわけですが、クランプの精度が上がった現在でも木釘で作られたバイオリンはあります。
理由はさまざまで、やはり仮付け後により正確に接着し直すことができるということを挙げる製作者もいます。
また、古い楽器の雰囲気を醸し出すことを目的としている製作者もいるようです。